遺留分制度に関する見直し
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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遺留分制度
見直しの理由:遺留分減殺請求権の行使による(*減殺対象の目的財産に共有関係が発生。)
円滑な事業継承、生存配偶者の安定した居住の阻害のおそれへの対応。
①遺留分減殺請求権の法的効果の見直し
ポイント:遺留分に関する権利の行使により「遺留分侵害額に相当する金銭債権」が生じる。
*遺留分侵害の存在・・・遺留分権利者による遺留分侵害請求の行使。
*関連して、遺留分侵害額の算定方法についても、細かな見直しあり。
②金銭債務の支払いに関する裁判所による期限の許与
ポイント:遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者等が、金銭を直ちに準備できない場合
には、裁判所に対し、金銭債務の全部・一部の支払いにつき期限の許与を求めることができる。
1)遺留減殺請求権の法的効果の見直し
「現行法」遺留分減殺請求権の法的性質として、形成権=物的効果説をとる。
(遺留分減殺請求権の法的性質)
*遺留分減殺請求権の法的性質と行使方法(最判昭41.7.14民集20巻6号1183頁)
・形成権:遺留分権利者の一方的意思表示によって遺留分保全に必要な限度で遺贈・贈与の
全部又は一部の効力を失わせる形成権として考える。
「遺留分権利者が民法1031条に基づいて行う減殺請求権は形成権であって、その権利行使は
受贈者または受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による要
はなく、また一旦、その意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生じるものと
解する」
例:被相続人A、相続人B/C。Bへの遺贈(主たる遺産である不動産甲6000万)により、Cに
つき、遺留分侵害が1500万発生したとする。CはBへ遺留分減殺請求。
遺留分減殺請求権行使による物権的効果から、B=4500/6000、C=1500/6000の共有状態
新)形成権であることは維持。ただし、権利行使により、遺留分侵害相当額の金銭債権への
転化。*遺留分減殺請求権の名称も、「遺留分侵害額請求権」へ。
例:CはBに対して、遺留分侵害相当額である1500万の給付を請求することが可能となる。
2)遺留分算定方法の見直し
*遺留分侵害額の算定
「現行法」
現行規定だけでなく不明瞭な遺留分の算定方法については、解釈をゆだねる。
・遺留分算定基礎財産に含まれる法定相続人に対する贈与の範囲について
・負担付遺贈、不相当な有償行為による贈与の計算について
「改正法」
①遺留分算定基礎財産に含めるべき相続人に対する生前贈与の範囲について(新1044条)
相続人に対する贈与は相続開始前の10年間にされたものを算定基礎財産に算入(同条
3項)(現1030条の規定は新1044条1項として維持)
*特別受益に関する現904条の規定の準用(新設:同条2項)
②負担付贈与は、目的の価額から負担の価額を控除した額を算定基礎財産に算入(新1045
条1項)
③不相当な対価による有償行為は、「当事者双方が遺留分権利者に損害を与えたことを知
ってしたもの」に限定して、当該対価を負担価額とする負担付贈与とみなす(新1045条2項)