遺産分割等に関する見直し
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
遺言・相続を支援しています。よろしくお願いします。
1、配偶者保護のための方策・・・特別受益における持戻し免除の意思表示推定
見直しの理由:当該贈与等の趣旨(生存配偶者の貢献に報い、その生活保障を図る)を尊重
した遺産分割が可能となる。配偶者保障にも資する。
ポイント:婚姻期間が20年以上の夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対して居住用不動産を
贈与・遺贈した場合、民法903条3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定する。
*遺産分割において、原則、当該居住用不動産の持戻し計算は不要となる。
2、預貯金債権の遺産分割における取扱い・・・遺産分割前の仮払い制度
ポイント:家庭裁判所の判断を経ないで、a)民法上、遺産分割前に預貯金の払戻しを認める
方策や、b)家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策が設けられている。
3、遺産分割前における遺産を処分した場合の遺産の範囲について(新906条の2)
ポイント:a)遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員
の同意により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができる。
b)共同相続人の一人又は数人が遺産分割前に遺産に属する財産を処分をした場合には、当該
処分をした共同相続人については、a)の同意を得る必要はない。
4、遺産分割の一部分割について(新907条)
ポイント:これまで原則的に否定されていた遺産分割の一部分割について、原則的に認める。
1)配偶者保護のための方策・・・特別受益における持戻し免除の意思表示推定
・持戻し免除の意思表示の推定規定(新903条4項)を特別受益制度(903条)に新設。
(配偶者の生活保障の観点)
・制度導入によるメリット
「現行法」特別受益の持戻し免除には、その意思表示が必要(903条3項)
例:被相続人A、相続人B/子CDの場合。ABの婚姻期間40年。Aの遺産6000万
①居住用不動産(持分1/2)2000万、②預貯金4000万)。AはBに対して居住用不動産(持分1/2)
2000万を生前贈与した。しかしAは特段、持ち戻し免除の意思表示はしなかった。
*生前贈与された2000万は、遺産の前渡しとして扱われ、特別受益として持ち戻しの対象に。
みなし相続財産額6000+2000=8000
B=8000×1/2=4000 4000-2000=2000 Bの具体的相続分=2000万(+生前贈与2000万)
CD=8000×1/2×1/2=2000 CDの具体的相続分=2000万ずつ
「改正法」*持ち戻し計算は不要となる。結果、Bはより多く財産を取得することが可能となる。
例:B=6000×1/2=3000 Bの具体的相続分=3000万(+贈与2000万)
CD=6000×1/2×1/2=1500 CDの具体的相続分=1500万ずつとなる。
持戻し免除の意思表示推定の要件
①夫婦の一方配偶者である被相続人が、他方配偶者に対して贈与又は遺贈をしたこと
②当該夫婦の婚姻期間が20年以上であること
③遺贈又は贈与の対象が、居住用不動産又はその敷地(居住用不動産)を目的とすること
意思表示推定の基準時
当該居住用不動産の贈与又は遺贈の時点
意思表示推定の効果
遺産分割において、当該居住用不動産の持戻しは不要となる。
(特別受益者の相続分)第903条4項
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に
供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該相続人は、その遺贈
又は贈与について第1項の居住帝を適用しない旨の意思表示をしたものと推定する。