民法改正(債権法)②約款
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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約款(定型約款)を用いた取引に関する改正
現代の社会では、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者などが
あらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき、この約款に基づいて
契約を締結することが少なくありません。
このような約款を用いた取引においては、顧客はその詳細な内容を確認し
ないまま契約を締結することが通例となっています。しかし、民法には約款を
用いた取引に関する基本的なルールが定められていませんでした。今回の改正
では、このような実情にを踏まえ、新たに、「定型約款」に関して、次のよう
なルールを新しく定めています。
⑴定型約款が契約の内容となる要件
顧客が定型約款にどのような条項が含まれているかを認識していなくとも、
①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、②定型約款
を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは、
個別の条項について合意をしたものとみなされます。他方で、信義則に反して
顧客の利益を一方的に害する不当な条項はその効果が認められません。
⑵定型約款の変更の要件
現在の実務では、事業者が既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更
することがあります。今回の改正では、定型約款の変更がどのような要件の下
で可能なのかについて新たなルールを設けています。
定型約款の変更は、①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や、②変更が
契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限って
認められます。顧客にとって必ずしも利益にならない変更については、事前に
インターネットなどで周知することが必要です。
*変更が合理的であるかどうかを判断する際には、変更の必要性、変更後の内容
の相当性、変更を予定する旨の契約条項の有無やその内容、顧客に与える影響や
その影響を軽減する措置の有無などが考慮されます。
*約款中に「当社都合で変更することがあります」と記載してあっても、一方的
に変更ができるわけではありません。
民法のルールに従ってする必要があります。
法定利率に関する改正
*民法には、契約の当事者間に貸金等の利率や遅延損害金(金銭債務の支払いが
遅れた場合の損害賠償)に関する合意がない場合に適用される利率が定められて
おり、これを「法定利率」といいます。例えば、交通事故などを原因とする不法
行為に基づく損害賠償における遅延損害金は法定利率によります。このほか、被
害者の逸失利益を算定するにあたって、将来収入から運用可能利益等を控除する
(中間利息控除)際にも利用されます。
極めて低金利の状態が長く続いている現状に照らすと、法定利率が高すぎるために、
不公平が生じているとの指摘がされたいます。
そこで、今回の改正では、法定利率を年5%から年3%に引き下げています。また、
将来的に法定利率が市中の金利動向と大きく離れたものになることを避けるため、
市中の金利動向に合わせて法定利率が自動的に変動する仕組みを新たに導入します。