民法改正(債権)約款②
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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約款(定型約款)に関する規定の新設
定型約款が契約内容となる要件
問題の所在
○民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。
・「定型約款」については、細部まで読んでいなくとも、その内容を契約内容とする旨の
合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない。
・明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」され
た状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合はは少ない。
○顧客は定型約款の条項の細部まで読まないことが通常であるが、不当な条項が混入している
場合もある。
・顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認める
ことが必要である。
改正法の内容
・定型約款が契約内容となるための要件(組入要件)
次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、
契約内容とすることを明確化・・・ただし、定型取引を行う合意前に相手方から定型約款
の内容を示すよう請求があった場合に、定型約款準備者が正当な事由なくその請求を拒ん
だ場合には、定型約款の条項の内容は契約内容とならない。(新548-3)
①定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
②(取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた
場合・・・ただし、相手方への「表示」が困難な取引類型(電車・バスの運送契約等)に
ついては、「公表」で足りる旨の特則が個別の業法に設けられている。
・契約の内容とすることが不適当な内容の契約条項(不当条項)の取扱い
(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であっても信義則
(民法1条2項)に反する内容については、合意したとはみなされない(契約の内容とは
ならない)ことを明確化。
例:売買契約において、本来の目的となっていた商品に加えて、想定外の別の商品の購入
を義務付ける不当な(不意打ち的)抱き合わせ販売条項など。
定型約款の変更要件
問題の所在
○長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して、
内容を事後的に変更する必要が生ずる。
例:保険法の制定(平成20年)に伴う保険約款の変更、犯罪による収益の移転防止に関す
る法律の改正(平成23年)に伴う預金規定の変更、クレジットカードのポイント制度改定
に関する約款の変更、電気料金値上げによる電気供給約款の変更など。
民法の原則によれば、契約内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得る必要
があるが、多数の顧客と個別に変更についての合意をすることは困難。
○約款中に「この約款は当社の都合により変更することがあります。」などの条項を設ける
実務もあるが、この条項が有効か否かは見解が分かれている。
実際に同意がなくとも変更を可能とする必要がある一方で、相手方(顧客)の利益保護の
観点から、合理的な場合に限定する必要もある。
改正法の内容(新548-4Ⅰ)
次の場合には、定型約款準備者が一般的に定型約款を変更することにおり、契約の内容を
変更することが可能であることを明確化( → 既存の契約についても契約内容が変更される。)
①変更が相手方の一般の利益に適合するな場合又は、
②変更の契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容相当性、定型約款の変更
することがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合。
「その他の変更に係る事情」:相手方に与える不利益の内容・程度、不利益の軽減措置の内容など。