民法改正(債権)契約解除
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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契約解除の要件に関する見直し①
債務者の帰責事由の要否
現543条(債務不能による解除権)は、債務者に帰責事由がない場合には
解除が認められないと定めている。そして、伝統的学説は、同条に基づく
解除だけでなく解除一般について帰責事由が必要であると解している。
【参照条文】
(履行不能による解除権)
第543条・・・履行の全部または一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。
ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、
この限りではない。
しかし、例えば次のような事例で、解除が認められないのは不当ではないか。
買主Aは、売主Bからパソコンを仕入れる契約を結んだが、売主Bの工場が落雷による火災(=売主B
に帰責事由がない火災)で焼失し、納期を過ぎても復旧の見込みも立たなくなった。
買主Aとしては、パソコンが納品されないと事業に支障が生ずるので、売主Bとの契約を解除し、同業他社
のCと同様の契約を結びたい。
改正法の内容
○債務不履行による解除一般について、債務者の責めに帰することができない事由によるものであっても
解除を可能なものとする。(新541,542)
○不履行が債権者の責めに帰すべき事由による場合には、解除を認めるのは不公平であるので、解除はできない
ものとしている。(新543)
契約解除の要件に関する見直し②
問題の所在
契約解除の可否をめぐるトラブルは、裁判実務における代表的な紛争類型の一つであり、重要な判例が積み
重ねられているが、それは現在の条文から読み取れない。
現541条の催告解除(履行の催告をしても履行がない場合に認められる解除)と現542条・543条の無催告解除
(履行の催告を要しない解除)について、判例を踏まえ、それぞれ要件を明文化すべきではないか。
検討課題①(催告解除が制限される要件の明文化)
現541条(履行遅滞等による解除権)の文言上は、あらゆる債務不履行について催告解除が認められるよう
に読めるが、判例は、付随的な債務の不履行や、不履行の程度が必ずしも重要でない場合については、催告
をしても解除が認められないとする。このことを適切に明文化すべきではないか。
①付随的な債務の不履行の例
・「長時間連続して使用すると本体に熱がこもり、破損するおそれがある」という使用上の注意を付すこと
を怠った。
②不履行の程度が必ずしも重要でない場合の例
・パソコン本体に、目立たない程度の引っ掻き傷がついていた。
検討課題②(無催告解除の要件の明文化)
無催告解除ができる場合について、現542条・543条は、①ある時期までに履行されなければ契約の目的が達せ
られない場合において、履行遅滞があった時(現542)、②履行不能となったとき(現543)を規定。
このほか、③履行を拒絶する意思を明示した時や、④契約の目的を達するのに充分な履行が見込めないときでも、
無催告解除が可能であると解されている。
改正法の内容
○催告解除の要件に関して、判例を踏まえ、契約及び取引通念に照らして不履行が軽微であるときは解除する
ことができない旨を明文化する。(新541)
○無催告解除の要件に関して、履行拒絶の意思の明示、(一部の履行はできる場合でも)契約をした目的を達
するのに足りる履行の見込みがないこと等の事情があれば解除が可能であることを明文化する。(新542)