改正相続法についてのQ&A
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
遺言・相続を支援しています。よろしくお願いします。
改正相続法についてのQ&A
Q1、相続とは何ですか
A1、民法では、人が死亡すると、その人の財産は相続人に承継されることとされ
ています。承継される財産には、預貯金や不動産などの積極財産だけでなく、銀行
に対するローンなどの債務(消極財産)も含まれます。なお、債務の額が大きい
場合などには、相続が開始されたことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に
申述することにより相続放棄をすることができます。
Q2、今回の改正では、配偶者短期居住権という権利も設けられたとのことですが、
どのような権利ですか
A2、今回の改正では、配偶者短期居住権という権利を創設し、配偶者が相続開始
の時に遺産に属する建物に住んでいた場合には、一定期間(例えば、その建物が
遺産分割の対象となる場合には、遺産分割が終了するまでの間)は、無償でその
建物を使用することができるようにしています。
Q3、配偶者居住権が設定された居住建物の固定資産税はだれが負担することになり
ますか
A3、固定資産税の納税義務者は、原則として固定資産の所有者とされており、配偶
者居住権が設定されている場合であっても、居住建物の所有者が納税義務者になるも
のとかんがえられます。したがって、居住建物の所有者は、固定資産税を納付した
場合には、配偶者に対して求償することができると考えられます。
Q4、預貯金の払戻しについて、今回2つの制度が設けられたとのことですが、両制度
の関係はどうなっていますか
A4、今回の改正で、遺産分割前に預貯金の払戻しを認める制度として、①家庭裁判所
の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策と、②家庭裁判所の判断を経て預貯金の
仮払いを得る方策の2つの方策が設けられた。①の方策については限度額が定められて
いることから、小口の資金需要については①の方策により、限度額を超える比較的大口
の資金需要がある場合については②の方策を用いることになるものと考えられます。
Q5、今回の改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されたとのことですが、全文パソ
コンで作成してもいいのですか
A5、全文をパソコンで作成することはできません。今回の改正では、自筆証書遺言に
添付する財産目録については手書きでなくてもよいこととしていますが、遺言書の本文
については、これまでどおり手書きで作成する必要があります。
Q6、どの法務局に遺言書保管の申請をすることができるのですか
A6、遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する
不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官
(法務局の事務官)に対してすることができます。
なお、遺言書保管所の指定及び具体的な管轄については、施行日(2020年7月10日)
までの間に定めることとなります。
Q7、保管対象となる遺言書はどのようなものですか
A7、保管申請の対象となるのは、自筆証書による遺言書のみです。また、遺言書は
封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません。
なお、具体的な様式については、施行日(2020年7月10日)までの間に定めることと
なります。
Q8、遺言書の保管には費用はかかるのですか
A8、遺言書の保管申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書(遺言書の画像情報等
を用いた証明書)又は遺言書保管事実証明書(法務局における遺言書が保管されている
かどうかを証明した書面)の交付の請求については、手数料を納める必要があります。
なお、具体的な手数料の額については、施行日(2020年7月10日)までの間に定める
こととなります。
Q9、遺留分とは何ですか、遺留分を侵害された者は、誰にいくら請求できるのですか
A9、遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障を図るなどの観点
から、最低限の取り分を確保する制度です。今回の改正により、遺留分を侵害された
相続人は、被相続から多額の遺贈又は贈与を受けた者に対して、遺留分及び遺留分侵
害額については、次の算式により算定します。
遺留分=(遺留分を算定するための財産の価額(注1))×(2分の1(注2)×(遺留分
権利者の法定相続分))
遺留分侵害額=(遺留分)-(遺留分権利者の特別受益の額)-(遺留分権利者が相続
によって得た積極財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)
(注1)遺留分を算定するための財産の価額=(相続時における被相続人の積極財産の額)
+(相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)+(第三者に対する生前贈与の額
(原則1年以内))-(被相続人の債務の額)
(注2)直系尊属のみが相続人である場合は3分の1
Q10、いつから改正法は施行されるのですか
改正法の規定は、以下のとおり、段階的に施行されることとされています。
○民法等の一部改正法
①自筆証書遺言の方式を緩和する方策 2019年1月13日~
②預貯金の払戻し制度、遺留分制度の見直し、 2019年7月1日~
特別の寄与等(①,3以外の規定)
③配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む)の新設等 2020年4月1日~
○遺言保管法 2020年7月10日~