相続関係改正⑧遺留分制度
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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遺留分制度に関する見直し
遺留分制度に関する見直しの要点は以下のとおりです。
(要点)
⑴遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果生ずるとされている現行法の規律を
見直し、遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずること
にする。
⑵遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が、金銭を直ちには準備できない
場合には、受遺者等は、裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を
求めることができる。
1、見直しのポイント
①遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権化する。
②金銭を直ちには準備できない受遺者又は受贈者の利益を図るため、受遺者又は受贈者の
請求により、裁判所が、金銭債務の全部又は一部の支払いにつき相当の許与することが
できるようにする。
2、現行制度
①遺留分減殺請求権の行使によって共有状態が生ずる。・・・事業承継の支障となって
いるという指摘がある。
②遺留分減殺請求権の行使によって生じる共有割合は、目的財産の評価額等を基準に
決めるため、通常は、分母・分子とも極めて大きな数字となる。・・・持分権の処分に
支障が出るおそれがある。
例:経営者であった被相続人が、事業を手伝っていた長男に会社の土地建物(評価額
1億1123万円)を長女に1234万5678円を相続させる旨の遺言をし、死亡した(配偶者
は既に死亡)。遺言の内容に不満な長女が長男に対し、遺留分減殺請求した場合。
長女の遺留分侵害額は、
1854万8242円={(1億1123万円+1234万5678円)×1/2×1/2-1234万5678円}
(現行法)
会社の土地建物が長男と長女の複雑な共有状態となる。
持分割合 長男:9268万1758/1億1123万
長女:1854万8242/1億1123万
3、制度導入のメリット
①遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生ずることを回避することができる。
②遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者の意思を尊重することが
できる。
(改正後)
遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権となる。同じ事例では長女は長男に対し、
1854万8242円請求できることになる。