相続関係改正③遺産分割
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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長期間婚姻している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護するための施策
1、見直しのポイント
婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し、その居住の用に供する建物
またはその敷地(居住用不動産)を遺贈または贈与した場合については、原則として、
計算上遺産の先渡し(特別受益)をうけたものとして取り扱わなくてもよいこととする。
このような場合における遺贈や贈与は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、
老後の生活の保障の趣旨で行われる場合が多い。
贈与や遺贈の趣旨を尊重した遺産の分割が可能となる(法律婚の尊重、高齢の配偶者
の生活の保障に資する)。
2、現行制度
贈与等を行ったとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため
配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等がなかった場合と同じになる。
被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない。
事例・・・ 相続人:配偶者と子2名(長男と長女)
遺産:居住用不動産(持ち分2分の1)2000万円(評価額)
その他資産6000万円
配偶者に対する贈与:居住用不動産(持ち分2分の1)2000万円
被相続人より生前贈与を受けた場合、遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われるため
配偶者の取り分を計算するときには、生前贈与分についても、相続財産とみなされる
ため、(8000万+2000万)×1/2-2000万=3000万円、となり、最終的な取得額は、
3000万+2000万=5000万となる。結局、贈与があった場合とそうでなかった場合とで、
最終的な取得額に差異がないこととなる。
3、制度導入のメリット
このような規定(被相続人の意思の推定規定)を設けることにより、原則として遺産
の先渡しを受けたものと取り扱う必要がなくなり、配偶者は、より多くの財産を取得
することができる。 → 贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となる。
被相続人が生前贈与することで、遺産の先渡しを受けたものと取り扱う必要がなくなり、
同じ事例において、生前贈与分について相続財産とみなす必要がなくなる結果、配偶者の
遺産分割における取得額は、8000万×1/2=4000万、となり、最終的な取得価額は、
4000万+2000万=6000万円となり、贈与がなかったとした場合に行う遺産分割より
多くの財産を最終的に取得できることになる。