民法改正(債権)⑬契約
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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民法改正(債権)2020年4月1日施行、契約に関する見直し
契約に関する基本原則とは、近代私法の基本原則と言われる契約自由の原則は、一般的に、以下の自由を指す。
①契約締結の自由:契約を締結し、又は締結しない自由
②相手方選択の自由:契約の相手方を選択する自由
③内容決定の自由:契約の内容を自由に決定することができること
④方式の自由:契約を書面で締結するか、口頭で締結するか等、契約締結の方式を自由に決定することが
できること
*ただし、これらの自由も無制限ではなく、法令上、契約の締結を義務付ける規定が設けられている場合
や、特定の内容の契約が無効となる場合などがある。
例;水道事業者は、正当の理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならないこと(水道法15Ⅰ)
・NHKとの受信締結義務(放送法64Ⅰ)
・30年より短い借地権の存続期間の定めは無効(借地借家法3,9)
・保証契約は、書面でしなければ効力を生じない(民法446Ⅱ)
問題の所在
これらの基本原則は確立した法理として異論なく認められているが、民法に明文の規定はない。
改正法の内容
「法令に特別の定めがある場合を除き」、「法令の制限内において」といった文言を加えた上で、契約
に関する基本原則を明文化(新521,522Ⅱ)
対話者にたいする契約の申込みの効力等の明記
基本的概念
○契約の申込みと撤回:契約は、申込みがなされ、それに対して承諾があれば、成立する。申込みが撤回
され、又はその効力の消滅後に承諾があっても、契約は成立しない。
○隔地者との対話者:意思表示が到達するまでに時間を要する者を「隔地者」と、要しない者を「対話者」
という。空間的な距離ではなく時間が判断の基準となるため、電話の相手方は対話者となる。
問題の所在
隔地者に対して承諾の期間を定めないで(~までに回答して下さい、と定めずに)行った申込みについては、
定めがあるが、対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みについて規定がなく、そのルールが
不明瞭。
改正法の内容
対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みに関する有力な解釈を明文化
○対話が継続している間であればいつでも申込みの撤回が可能(新525Ⅱ)
○対話継続中に承諾がされなければ、申込みは効力を失う(新525Ⅲ)
*併せて、原則撤回不可の申込みも撤回権を留保したケースでは撤回可能等の例外的取扱いについての
解釈も明文化(新523Ⅰ、525Ⅰ、525Ⅲ)
隔地者間の契約の成立時期の見直し
現行法・・・隔地者間の契約に関しては、「発信主義」(承諾通知を発信した時に契約が成立する)を
採用(現526Ⅰ)
*意思表示は相手方に到達した時に効力を生ずるとの到達主義(現97Ⅰ)の例外。
問題の所在
○承諾通知の発信時に契約が成立すると、申込者が知らない間に履行遅滞に陥るおそれがあるなど、申込者
が不測の損害を被るおそれがある。
○当事者が迅速な契約の成立を望むのであればメール等を使えばよく、迅速な通信手段のある今日では例外
規定を置く必要性に乏しい。
*既にインターネット上の取引においては、発信主義ではなく、到達主義を採用(電子消費者契約法)。
改正法の内容
現526Ⅰを削除・・・隔地者間の場合でも、承諾の意思表示が相手方に到達した時に効力が発生(現97Ⅰ
が適用される。)。