民法改正(債権)⑫免責的債務引受
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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民法改正(債権)2020年4月1日施行、免責的債務引受
問題の所在・・・免責的債務引受人ついて現行法には規定がない
改正法の内容
○債権者・引受人間の契約によってすることができる。・・・債権者が契約した旨を債務者に通知した時
に効力発生(新472Ⅱ)
○債務者・引受人間の契約をし、債権者が承諾することによってもすることができる。(新472Ⅲ)
○引受人は債務者にたいして求償権を取得しない。(新472-3)
○債権者は、担保権・保証を引受人が負担する債務に移すことができる(債務者の承諾不要)。(新472-4)
ただし、引受人以外の者が設定した担保権については、設定者の承諾(保証人については、書面等による
もの)が必要。
併存的債務引受
(問題の所在)・・・併存的債務引受について現行法には規定がない。
改正法の内容
○債権者ア・引受人間の契約によってすることができる。(新470Ⅱ)
○債務者・引受人間の契約によってすることができる。・・・債権者が引受人に対して承諾した時に効力
発生(新470Ⅱ)
○引受人は、債務者と連帯して、債務を負担する。(新470Ⅱ)
弁済(第三者弁済)に関する見直し
第三者弁済(現状)
○利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない(現474)。
○債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない。
問題の所在
○債務者の意思に反していることを知らない債権者が引受た弁済がの後に無効になるおそれがある。
○債権者は、見知らぬ第三者から弁済をしたい旨の申出があっても、拒絶することができない。
新法の内容
○「弁済をすることについて正当な利益を有する者でない第三者」の弁済が債務者の意思に反する場合で
あっても、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときには、その弁済は有効としている。
(新474)
○「弁済をするについて正当な利益を有する者以外の第三者」は、債権者の意思に反して、弁済することが
できない。(新474)
・「利害関係を有しない第三者」の表現を「弁済することについて正当な利益を有する者でない第三者」の
に変更。
相殺禁止に関する見直し
相殺とは、AとBが互いに100万円の債権を有する場合に、一方の意思表示により、互いの債権を消滅させること。
Aが相殺する場合には、Aの債権を自働債権、相手方Bの債権を受働債権という。
受働債権が不法行為債権である場合の規律の見直し
現状:不法行為債権を受働債権として相殺することは一律禁止(現509)
理由:○不法行為の誘発を防止、〇現実の弁済による被害者
参考条文、第509条(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)・・・債務が不法行為によって
生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
問題の所在
例えば、AとB
が双方の過失で交通事故(物損)を起こし、相互に不法行為債権を有している場合に、Bが無資力であっても、A
は相殺できず、自己の債務のみ全額弁済することになる。・・・相殺禁止の理由に照らして合理的な範囲に限定
すべきではないか。
改正法の内容
相殺禁止の対象となる不法行為債権を次の①②に限定し、それ以外は可相殺可能
①加害者の悪意による不法行為に基づく損害賠償(誘発防止という観点)
②生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償(現実弁償が必要という観点)
・②に関連して、一般の債務不履行に基づく生命・身体の侵害による損害賠償も相殺を禁止している。