民法改正(債権)⑧債務者の責任財産の保全
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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民法改正(債権)2020年4月1日施行、債務者の責任財産の保全のための制度
債務者が金銭債務を履行しない場合・・・債権者は、勝訴判決などの債務名義(強制執行の根拠となる文書)
を得た上、債務者の財産(=責任財産)にたいして、強制執行をして、債権回収をすることができる。
例:請負業者(債務者)に融資している銀行は、返済がされないときは、債務者の責任財産(工場の土地・
建物、未収債権など)に強制執行をすることができる。
責任財産を保全する必要性
債務者が、自己の有する権利を行使しない場合(例1)
債務者が、自己の財産を流出させる場合(例2)には、債権回収が困難となるおそれがある。・・・責任財産
の保全のための方策が必要である。
(例1)債務超過に陥った請負業者(債務者)が注文者からの請負代金の回収を怠っている場合、この事態に
対処するため、債権者代位の制度。
(例2)債務超過に陥った請負業者(債務者)が所有する不動産を配偶者に無償で譲渡(贈与)し所有権移転
登記をした場合、この事態に対処するた詐害行為取消の制度。
債権者代位権に関する見直し
債権者代位権とは、債権者が自己の債権を保全するために必要があるときは、債務者の第三者に対する権利を
債務者に代わって行使(代位行使)することができる制度です。
例:債務超過に陥った請負業者(債務者)が注文者(第三債務者)からの請負代金の回収を怠っている場合に、
その請負業者に融資をしている銀行(債権者)は、注文者に対する請負代金債権を代位行使することができる。
問題の所在
債権者が他人である債務者の財産管理に介入する制度であるにもかかわらず、現423条は骨格を定めているのみ
である。・・・具体的なルールは判例によって形成されている。
現行法第423条
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、一身に属する
権利は、この限りでない。
2債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することは
できない。ただし、保存行為は、この限りではない。
債務者や第三債務者の利益保護等も考慮して、ルールの明確化・合理化を図る必要がある。
改正法の内容
次のようなルール等を創設
○金銭債権等を代位行使する場合には、債権者は自己への支払等を求めることができる。(新423-3)
○債権者の権利行使後も被代位権利についての債務者の処分は妨げられない。(新423-5)
○債権者が訴えをもって代位行使するときは、債務者の訴訟告知をしなければならない。(新423-6)
訴訟告知:訴訟が提起されたことを利害関係のある第三者に告知する裁判上の手続きをいう。
詐害行為取消権に関する見直し
詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした行為(詐害行為)について、債権者
がその取消し等を裁判所に請求することができる制度
例:債務超過に陥った請負業者(債務者)が、自己が所有する建物を配偶者に無償で譲渡し(贈与)、
所有権移転登記をした場合に、請負業者に融資している銀行(債権者)は、贈与契約の取消しと所有権
移転登記の抹消を裁判所に請求することができる。
問題の所在
債権者が他人(債務者)がした行為の取消し等を裁判上請求するという強力な制度であり、複雑な利害調整
を要するにもかかわらず、現424条以下の3か条で骨格を定めているのみ。・・・具体的なルールは判例に
よって形成されている。・・・関係当事者の利益調整も考慮しつつ、ルールの明確化・合理化を図る必要が
ある。
改正法の内容
次のようなルール等を創設
○債権者は、債務者がした行為の取消しとともに逸失財産の返還(返還が困難であるときは価額の償還)を
請求することができる。(新424-6)
○詐害行為取消しの訴えにおいては、受益者を被告とし、債務者には訴訟告知をすることを要する。(新424-7)
○詐害行為取消権の要件(詐害行為性、詐害意思等)についても、類似する制度(破産法の否認権等)との
整合性をとりつつ、具体的に明確化する。(新424-2~424-4)