民法改正(債権)③意思表示に関する見直し
鹿児島市の行政書士安田事務所です。
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民法改正(債権)2020年4月1日施行、意思表示に関する見直し。
意思表示とは一定の法律効果の発生を欲する旨の意思の表明 → 当事者の意思表示の合致によって契約は
成立する。
意思表示に問題があるケース、民法は5つのケースを列挙して規定している。
1、心裡留保【93条】・・・わざと、真意と異なる意思を表明した場合(事例:退職する意思はなかったが、
反省の意を強調する趣旨で、退職届を提出した)・・・第三者保護規定の新設等
2、通謀虚偽表示【94条】・・・①相手と示し合わせて真意と異なる意思を表明した場合(事例:財産を
債権者から隠すために、土地について架空の売買契約をする)・・・改正なし。
②間違って真意と異なる意思を表明した場合(事例:売買代金として1000万円と記載すべきところ100万円
と記載した売買契約書を作成してしまった(売主に錯誤))。・・・改正なし。
3、錯誤【95条】・・・真意通りに意思を表明しているが、その真意が何らかの錯誤に基づいていた場合
(動機の錯誤)、(事例:土地の譲渡に伴って自らが納税義務を負うのに、相手方が納税義務負うと誤解し、
土地を譲渡した(売主に錯誤))。・・・改正法は、錯誤の効果を「無効」から「取消し」に改める。
4、詐欺【96条】・・・だまされて、意思を表明した場合(事例:だまされて二束三文のつぼを高値で買わさ
れた)・・・第三者保護の要件の見直し等の改正。
5、脅迫【96条】・・・脅迫されて、意思を表明した場合(事例:脅迫されて不必要な土地を買わされた)・・
改正なし。
問題の所在・・・錯誤に関する見直し(要件の明確化)
現95条は「法律行為の要素」に錯誤があることが必要であると規定。
判例はこの要件について、次のように判断している。
①表意者が錯誤がなければその意思表示をしなかったであろうと認められることが必要(主観的因果性)
②通常人であっても錯誤がなければその意思表示をしなかったであろうと認められることが必要(客観的重要性)
③ア、間違って真意と異なる意思を表明した場合(表示の錯誤)とイ、真意どおりに意思を表明しているが、その
真意が何らかの誤解に基づいていた場合(動機の錯誤)とを区別し、動機の錯誤については、上記①,②の要件に
加えて、その動機が意思表示の内容として表示されていることが必要。
○現95条の文言と判例の考え方は必ずしも一致しない。意思表示の効力を否定する要件を明確化することが必要。
改正法の内容
①意思表示が錯誤に基づくものであること(判例①の要件に対応)
②錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること(判例②の要件に対応)
③動機の錯誤については、動機である事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること(判例の③の
要件に対応)
錯誤に関する見直し(効果を「取消」に変更)
現行法・・・現95条は、錯誤による意思表示は無効としている。
民法の一般理解では、
①無効は誰にでも主張することができ、
②無効を主張することができる期間に制限はない。
現行条文
(取消権者)第120条2・・・詐欺又は脅迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者
又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
(取消権の期間の制限)第126条・・・取消権は、追認することができる時から5年間行使しないときは、時効
によって消滅する。行為の時から20年を経過した時も同様とする。
問題の所在
①判例は、錯誤を理由とする意思表示の無効は、誤解していた表意者のみが主張でき、相手方は主張できないと
判事、通常の無効とは異なる扱い。(例えば:売買契約において買主に錯誤があるケースでは、買主は無効を
主張できるが、売主は無効を主張できない。)
②詐欺があった場合は、意思表示の効力を否定することができるのは5年間、錯誤があった場合に期間制限を
設けないのは、バランスを欠く(例えば:売買契約において、詐欺があったケースでは、5年間しかその売買
契約の効力を否定できないが、錯誤があったケースでは、5年を経過した後も、売買契約の効力を否定できる。)