会社設立(定款認証)⑤
鹿児島市の行政書士安田事務所の安田三三男(やすだみさお)です。
会社設立の定款認証を支援しています。よろしくお願いします。
株式会社の定款の記載事項
1、定款の記載事項
①法律上必ず記載しないと定款が無効となるもの(絶対的記載事項、会社法27条)
②定款に記載しないと効力が生じないもの(相対的記載事項)
③記載するかしないか当事者に任されているもの(任意的記載事項)
会社法が規定する定款の絶対的記載事項は次のとおりです(会27条)
①目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
設立に際して発行する株式の総数(発行可能株式総数)については、出資される財産
の総額にかかわらず、設立時発行株式数が定まる改正前商法の規定は、設立手続きを
硬直化させるおそれがあるとして、絶対的記載事項から除き、会社の設立に際して
出資される財産の価額又はその最低額を定めて定款に記載するすべきであるとされ
ました(会27条4号)。
⑤発起人の氏名又は名称及び住所
以上の事項を欠く定款は無効です。
なお、会社が発行する株式の総数(発行可能株式総数)については、定款作成時に
定める必要はないものとし、設立中の株式引受け状況を見極めながら、設立登記
申請時までに定款に定めればよいことになっています(会37条、98条)。
2、相対的記載事項とは、絶対的記載事項と異なり、定款に記載しなくても直ちに
定款の無効を招来しないが、記載がない以上その事項につき効力が認められない
事項です。会社法は、法律の各条項に一応の定めがある事項について定款により
これと異なる定めを置くことができる場合を、逐一その条項に明記しており、法律に
「定款により別段の定めをすることができる」旨の定めがない以上、それと異なる
定款の定めは認められません。そこで、会社法に「定款により別段の定めをすること
ができる」旨の定めある事項が相対的記載事項ということになります。
このような意味で法が承認し、定款自治に委ねた相対的記載事項は、相当広範囲、
かつ、重要なものがあり、そのうち主要なものを示せば、次のようなものがあり
ます。
①変態設立事項(会28条)
②設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除(会89条、342条)
③株主名簿管理人(会123条)
④譲渡制限株式の指定買取人の指定を株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役
会)以外の者に権限とする定め(会120条5項)
⑤相続人等に対する売渡請求権(会174条)
⑥単元株式数(会188条1項)
⑦株式発行(会214条)
⑧株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮(会299条1項、368条1項、
376条2項、392条1項)
⑨取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置(会326条
2項)
⑩取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の免責免除(会426条)
⑪社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約(会427条)
⑫取締役会設置会社における中間配当の定め(会454条5項)
3、任意的記載事項
定款の記載事項のうち、絶対的記等載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法
その他の強制法規の規定等に違反しないものを任意的記載事項といいます。(会社法
29条に規定する「この法律の規定に違反しないもの」に該当します。)任意的記載
事項は、定款に定めた範囲で株主その他の内部の者を拘束し、その事項を変更する
には、定款変更手続きが必要です。
任意的記載事項としては、例えば次の事項に関する規定があります。
⑴株式について
①株式名簿の基準日(会124条)
②株主名簿の名義書換手続(会133条、134条)
③株券の再発行手続(会228条2項)
⑵株主総会について
①定時株主総会の招集時期(会296条1項)
②株主総会の議長(会315条)
③議決権の代理行使(会310条)
⑶株主総会以外の機関について
①取締役(会326条1項、331条4項)、監査役、執行役(会402条1項)の員数
②代表取締役(会349条3項)、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務
取締役等)
⑶取締役会の招集権者(会366条1項)
⑷計算について
事業年度(会296条1項、会社計算規則91条2項)
⑸広告について
①公告の方法(会939条1項)
会社法は、全ての会社の公告方法について、任意的記載事項とし、官報に記載する
方法、時事に関する事項を記載する日刊新聞に掲載する方法、電子広告のいずれかを
選択できるものとし(会939条1項)、定款に公告方法の定めがない会社については、
自動的に官報に掲載する方法によることとしています(同条4項)。