会社設立の定款認証⑱
鹿児島市の行政書士安田事務所の安田三三男(やすだみさお)です。
会社設立の定款認証を支援しています。よろしくお願いします。
会社設立の定款認証
変態設立事項
1、次の①にし②の事項は、定款に記載しない限り、それぞれの事項の効力が認められない
いわゆる相対的記載事項であり、変態設立事項と呼ばれています(会28条)。
①金銭以外の財産を出資する者の氏名、当該財産及びその価額、並びにその者に対して
割り当てる設立時発行株式の数(会28条1号。「現物出資」と呼ばれています。)
②株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名
(同条2号。「財産引受」と呼ばれています。)
③株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその譲渡人の氏名(
同条3号)
④株式会社の負担する設立に関する費用(同条4号、定款の認証の手数料その他会社法施
行規則5条で定めるもの(払込取扱機関に対する報酬等、検査役の報酬、設立登記の登
録免許税等です。)を除く。)
①の現物出資において対象となる財産としては、不動産、自動車・機械その他の動産、
有価証券、債券、特許権その他の無体財産権、事業の全部又は一部などが考えられます。
②の財産引受とは、発起人が会社のために会社の設立を条件として特定の財産を有償で
譲り受けることを約する契約をいい、会社設立後、直ちに会社が事業を開始できるよう、
設立中に、不動産や設備等を会社のために準備するような場合です。
③の特別利益は、発起人が会社設立者としての功労に対する特別な利益であり、利益(剰
余金)の配当、新株の引受け、会社施設の利用、会社製品の買受け等に関する優先権の付
与などが主要な例とされています。
④の設立費用には、設立事務所の賃貸料、設立事務員に対する給与、印刷費、広告費、創
立総会の費用、弁護士等による証明費用などがあり、定款に記載した金額(総額)の範囲
内で、発起人が成立後の会社に対して請求できます。
2、変態設立事項は、例えば、現物出資や財産引受の各対象財産が過大評価された場合な
ど、発起人らによって、濫用されると、一部の者を不当に利し、また、会社の基盤的財産
を損ない、他の株式や利害関係者を害するおそれがあります。そこで、会社法は、これを
防止するため、これらの事項については、定款に法定の記載事項を記載させた上、特別の
手続きを定めています。
すなわち、ア)定款に変態設立事項を記載し、イ)この定款について公証人の認証を受け
ウ)記載内容の当否につき、発起人の申立てに基づく裁判所選任にかかる検査役の調査を
受け、エ)裁判所が、不当と認めたときは、これを変更する決定をし、オ)発起人は当該
決定の確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定款の定めを
廃止する定款の変更ができます(会33条1項ないし9項)。
募集設立の場合は、募集株式と引換にする金銭の払込期日又は期間の初日のもっとも早い
日以後は、発起人による定款変更はできず(会95条)、検査役の報告等が創立総会に提出
され、創立総会が不当としたときは、その決議で定款の変更ができることとされていま
す(会96条)。
3、次の場合は、上記検査役の調査等が免除されます(会33条10項)。
①現物出資及び財産引受の各対象の財産につき定款に記載された価額の総額が500万円を
超えない場合
②現物出資及財産引受の各対象財産のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載
されたか価額が、その市場価格として会社法施行規則6条により算定される価額を越えて
いない場合
③現物出資及び財産引受の各対象財産について定款に記載された価額につき、弁護士、弁
護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士、税理士法人(不
動産については、当該証明に加えて更に不動産鑑定士の鑑定評価)等からその価額が相当
である旨の証明を受けている場合
4、会社設立前から存在する継続的事業用財産を会社成立後2年以内に会社が取得する行為
は「事後設立」と呼ばれ、現物出資や財産引受に類する面があるため、その価額が会社の
純資産の5分の1を超える場合には、株主総会の特別決議事項とされています。なお、この
割合は定款で下げることができます(会467条1項5号、309条2項11号)。