農地法相続等の届出制度及び相続未登記農地の貸付け
鹿児島市の行政書士安田事務所の安田三三男(やすだみさお)です。
農地法許可申請手続きを支援しています。よろしくお願いします。
1、農地の相続等の届出制度(農地法第3条の3)
相続(遺産分割、包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈を含む)、法人の合併・分割、時効取得等
により許可を受けることなく農地の権利を取得した者は、権利の取得を知った日から
おおむね10か月以内に農業委員会に届出(事務処理要領 様式3号の1)をすることとされています。
この届出書の様式は、農業委員会の窓口の他、市町村の関係窓口に備え付けることが望ましい。
農地の権利を的確に把握する観点から、相続発生時すみやかに遺産分割協議が整う以前に、農地の
相続人全員の名前の記載による届出が求められています。
なお、相続により農地を取得する場合、①相続人全員に均等相続が行われた後(相続人全員の共有と
なった後)、②遺産分割協議により特定の相続人が農地の全ての権利を有することとなるのが一般的
であり、①と②のいずれも農地法第3条の許可は不要とされていますが、①の段階で届出を行う必要
があります。
2、届出から農地のあっせんまでの流れ
○農地の相続等の届出手続き
農地法の許可を要さずに農地の権利を取得した者(相続、時効取得、法人の合併、分割等)は農業委
員会へ → 届出 (農地の適正かつ効率的な利用が図られているかどうかをチェックする) →
相続農地等の利用あっせん(農地の適正かつ効率的な利用がはかられないおそれがあるときは、届出
をした者に対し、農地のあっせん等を行う。
⑴農業委員会の事務
農業委員会は届出書の記載事項を検討したうえで、これを受理します。届出された農地が適正かつ
効率的に利用されないおそれがある場合は、届出したものに対して、農地の所有権の移転等をあっ
せんします。
届出の効力・・・届出は権利取得の効力を発生させるものではありません。そのため、農地台帳へ
の記載は、届出があった旨が分かるようにする程度にとどめ、正式に農地の権利設定・移転がされ
たことが確認できれば、農地の所有者等を書き替えます。
⑵懲罰・・・届出をしなかったり、虚偽の届出をした者は、10万円以下の過料に処せられます
(農地法第69条)。
3、所有者不明農地(相続未登記農地)の利活用のための新制度
平成30年の農業経営基盤強化促進法等の改正により、相続未登記農地の貸付けが容易になりました。
具体的には、全ての相続人の探索や同意取得を不要とし、農業委員会が一定の範囲(政令、運用通知
で明示)の探索後、農地中間管理機構に貸し付ける旨の6か月間の公示を経て、20年以上の利用権の
設定が可能となります。(なお、借賃については、代表者に支払うことになります。)相続未登記
農地が全農地の約2割を占める中、本制度の積極的な活用が望まれています。